投資事業有限責任組合の設立
投資事業有限責任組合(investment business limited partnership)
投資事業組合を法律的に登記できるようにした手段として「投資事業有限責任組合契約に関する法律」を根拠とする「投資事業有限責任組合」があります。組合という名称ですがいわゆる土建業者が作る協同組合ではありません。法人格がないからです。あくまでお金を出し合う方々が集まり、法律に則った契約書を作成して同意の上記名押印し、その事実を法務局に登記することで法人格が有るかのような実体を持つことができるのです。よって組合名義で銀行口座を持つことはもちろん各種契約行為や証券会社の取引口座を持つことも可能です。ファンド関係は法律が入り乱れていますので、組合の登記の前に十分な調査が必要なことは言うまでもありません。さらに投資事業有限責任組合は無限責任組合員が必要です。読んで字のごとくこの組合員は組合事業が失敗して負債を抱えたら全てをなげうって経済的責任をとる必要がありますが、通常この組合員は法人とすることで個人的な破産は無いようにします。英文ではinvestment
business limited partnershipとなりますが、なぜか略しLPSと呼ばれています。
毎年公認会計士の意見書を作成する必要があります。出来るだけ公認会計士の資格を持った税理士さんに会計を見てもらうのが良いでしょう。この意見書は組合事務所に備えておき、組合員が閲覧を希望したときはいつでも見せられるようにしておくようにします。
投資事業有限責任組合の事業
投資事業有限責任組合の目的は法律で決まっており、事業者(法人及び個人)に対する投資が主目的となり、これ以外の事業は出来ません。この点で事業内容が何でもできるLLPとは大幅に異なります。主たる事業は株式の取得、有価証券の取得、金銭債権の取得、投資組合への出資等です。LPSは投資に特化した組合であるために信用力が抜群で、民間だけでなく都道府県等の公共企業体でもベンチャー支援でこの投資事業有限責任組合がたくさん用いられています。LLPつまり有限責任事業組合は事業目的が何でもOKのあくまで共同事業体となっているために、「投資」と頭についている投資事業有限責任組合よりも資金集めの点で苦労するかもしれません。資金集めならLPSですね。
それでは具体的に投資事業有限責任組合の法的に限定されている事業を見てみましょう。
1・株式会社の設立時に発行する株式の取得。つまり新規で設立する会社に金を出すこと。
2・株式会社が増資の際に発行する株式の取得
3・新株予約権、社債、その他の有価証券の保有
4・金銭債権。つまり事業者がしている借金の債権のこと。債権者から買い取る
5・工業所有権(特許や実用新案、商標権)や著作権の取得
6・事業者に金銭を貸し付ける事業(但し、貸金業登録が必要)
7・匿名組合や他の投資事業有限責任組合への出資
8・事業者への経営指導や技術指導
9・外国法人への投資
10・その他の金銭の運用としての貯金や国債の購入
以上に限定されています。これ以外の事業、例えば不動産事業や為替投資等は行うことができません。
投資事業有限責任組合の設立に必要な条件
設立時に組合員が2名以上必要になります。最初は2名で十分ですが、追加組合員を徐々に加えていくことができます。組合員は個人でも法人でも成ることができます。
ここで重要な点は組合員には2種類あり、有限責任組合員(LP)と無限責任組合員(GP)がある点です。つまり組合員が2名なら1名は有限でもう1名は無限となります。有限責任組合員とは組合にお金を出しますが運用その他組合の運営には一切手を出しませんが組合が損害を被っても当方は責任は出資の範囲何ですよという組合員のことです。いわゆる「私お金出す人」といえます。
一方無限責任組合員とは原則としてお金も出しますが組合の事業を責任を持って行う組合業務執行者のことです(俗に言う胴元)。通常自分ではたくさん出資はせずに任された運用金を増やす仕事に没頭します。万が一組合が損害を受けた時は全責任を取るという重要な立場です。最も実務的ににはこの無限責任組合員を法人にしている場合がほとんどなので個人として金銭的責任をとるという事はほとんどありません。また、組合の損害といっても運用で失敗とかではなく、組合員以外の第三者への金銭的損害なのであまり気にしないでも良いかと思います。無限責任組合員が2人以上居るときは代表者を決めておくと良いでしょう。この方が組合長です。
さて以上の組合員が決まりましたらいよいよ組合契約締結となりますが、その前に決めて置くべき事項があります。
投資事業有限責任組合設立に際して決めておくべき事
@組合の名称は大切です。これから多くの方々にお金を出して頂くわけですからなるべく威厳のあるそれでいてわかり安い名前が最適です。条件としては名前の最初か最後のどちらかに「投資事業有限責任組合」と付けることです。例えば投資対象の会社名に第1号ファンドと付けたりしています。名前が決まりましたら組合代表印をハンコ屋さんに注文しましょう。形式は株式会社代表印と同じです。
A組合の事業はすでに法定されているので選択の余地はありません。(上記参照)
B組合の本部事務所は決定しておきます。独立した組合事務所を置いても良いのですが、無限責任組合員の会社を本部にする場合が多いようです。単に東京都港区だけでは駄目で、きちんと丁目や番地まで指定します。ビル名まで指定しても構いませんが無くても大丈夫です。
C組合契約の期限は定めます。組合は永遠ではなく必ず有効期限を定めます。例えば5年とかにしておいて、期限が来たらまた更新すれば良いだけの話です。
D出資の最低金額を定めます。1口1万円とか10万円などと決めておきます。制限はありません。お金持ち相手なら1口1000万円以上でも良いでしょう。最初の組合員は2名でそれぞれ無限責任組合員が何口、有限責任組合員が何口と決めます。
E組合員が一同に会して集まる組合員集会についても集会何日前に通知するかなどの細かい点も決めます。わからない場合は当方にて設定します。
F会社と同じく会計年度も決めます。通常4月1日から翌年の3月31日が多いようですが、特に決まりはありません。
他にも細々した決定事項が相当数ありますが、当事務所にて他の組合と同じような通常ありそうなもの(デフォルト)にしていますのでご相談ください。
以上の組合の詳細が決まりましたらそれに基づく組合契約書を作成します。組合契約書は全体がA4で30ページから50ページほどになり、組合の大きさや決めておく条件によりオーダーメイドで作成いたします。但しあまりに短いものを作成しますと問題が起きた時にそれに関する方策の記載が無いためにトラブルを起こす事もあります。組合に合わせた適当なものを作成する必要があるでしょう。
投資事業有限責任組合の登記
さあここまで来たらあと一息です。最初の組合員(当初組合員)は2名で良いので、1人の運営者と1人の出資者を決めます。運営者さんが個人の場合は個人の実印と印鑑証明書を用意してください。運営者が法人の場合は会社の登記簿謄本、会社印と会社印の印鑑証明書が必要です。
なお、印鑑証明書と実印以外の必要な書類は全て当事務所で御用意し、ハンコを押すだけにして置けるように準備いたします。
さて、有限、無限の2名組合員が組合契約締結となります。各自が組合契約書に判をを押し、終了となります。
後は通常専門家に任せます。
10日程度で謄本がとれますので謄本を銀行に持ち込んで組合名義口座を開設しましょう。口座を開設しましたら他の出資者の募集を開始仕してください。
登記されましたら税務署に相談して会計処理の方法を聞いてください。また税理士さんの中で公認会計士を持っている方がいますのでその方に会計を委託し、毎年会計報告書を書いてもらってください。報告書は特に役所に提出するようなものではありませんので、出資者に交付するのみで足ります。
投資顧問業とのからみ
通常投資事業有限責任組合では、無限責任組合員が音頭を取って投資家からお金を集め、主に株や債権等の有価証券に投資します。組合財産は共有とされ、具体的な運用は専門家である無限責任組合員が行い、利益と損失はその持分割合に応じて投資家に分配されます。それでは無限責任組合員は投資顧問業法の規制(投資一任業務)を受けるのかが気になるところです。
法文によると投資事業有限責任組合はみんなで行う共同事業ということで定義され、、無限責任組合員は最低1口以上の投資も行います。(法6条第1項)そのため、投資顧問業法が規制する「他人から、有価証券の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任され、当該投資判断に基づき当該他人のため投資を行うこと」には該当しません。よって投資一任業務にはあたりません。
投資事業有限責任組合員の追加募集その他
当初の組合員が最低の2名で始まりましたらましたら組合の全責任を任されている無限責任組合員は有限責任組合員の追加募集をしましょう。いわば出資者を募るわけです。一定の期間募集しましたら締め切り、以降は加入を認めないという方法も採れます。
一番やっかいなのが組合員の脱退です。高額の出資をしておいて急に脱退するので出資金を返してくれといわれると非常に困ります。通常やむを得ない場合のみ脱退を認め、出資金は組合に返還可能な財力のある時まで待ってもらいましょう。この辺は組合規約に盛り込んでおきます。
投資事業有限責任組合は組合業務執行者である無限責任組合員がその命運を握っています。慎重に運営を進めてもらいたいものです。
金融商品取引業と投資運用業との関係
本来、ファンドで投資の募集をしたり集めたお金を運用したりすれば第二種金融商品取引業と投資運用業の金融庁への登録が必要となります。しかし、投資事業有限責任組合には適格機関投資家としての資格があるため(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令(平成五年三月三日号外大蔵省令第十四号)第10条1項18号)、運用者以外の組合員が49人以下であれば金融庁へは届出だけで良いという特例があります。(金融商品取引法第63条1項1号2号)この特例はあくまで49人以下の場合だけで、50人目からは2本目のLPSを作るか、第二種金融商品取引業と投資運用業の登録を取るかの選択に迫られます。しかし、この2つの登録を受けるためには最低でも資本金5000万円以上の会社にする必要がありますので、少々面倒でも2本目を設立したほうが楽かもしれません。但し2本目は1本目を設立してから6ヶ月以上空ける必要があります。適格機関投資家等特例業務に該当するためには民法組合等と投資事業有限責任組合を入れ子にした親ファンド子ファンドを組成する必要があります。詳細は投資組合のページをご覧ください。。