社団財団法人改革
一般社団法人および一般財団法人とは
平成20年より公益法人に関する法律が大改正され、中間法人や従来の社団法人や財団法人は廃止されます。いままで社団法人といえば政治家に2000万円くらい払えば設立してもらえるとか、見せ金が4000万円くらいあると良いなどの悪い噂が飛び交うかなり灰色の世界でした。また、政府機関や地方自治体関係の社団法人や財団法人は定年過ぎの役人の天下り先となっており、職員も毎日お茶を飲んでいれば相当の給料をもらえるという夢のような世界でした。このような社団財団法人は事業目的が曖昧で、一体何をしているのかはなはだ不明でして、本当は何もしていない引きこもりの若者みたいなものでした。それでも補助金がバンバン入るという税金の無駄使いの指摘がしばしばなされる問題児でもありました。
これではいけないということで公益法人改革が叫ばれ、明治以来100年以上もメスの入らなかった聖域である社団法人と財団法人を足元から突き崩してしまう目的で成立したのが「一般社団法人および一般財団法人に関する法律」と「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」です。この法律のすごいところは株式会社のように一般庶民が簡単に社団法人や財団法人を設立できてしまうことです。最も手続きがややこしいですが、私たちのような専門家に依頼すれば少々の印紙代と手数料で数週間であなたも社団法人や財団法人の理事長ということになります。そんな夢のような話が平成20年から現実となるのです。
それではこの一般社団法人と一般財団法人が具体的にどんなものなのか見てみましょう。
新たに生まれる4つの法人
今回の法律改正で新たに設立可能になる法人は4種類となり、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人の4つです。このうち一般社団法人と一般財団法人は誰でも株式会社を設立する程度の気楽さで設立することができます。しかし、財団は財産の集まりに法人格を与えるので最低でも300万円程度の資産が必要です。普通に団体運営するのであればこの2つの法人でも十分です。あくどい儲け仕事はやっていない会費のみで運営されている団体であればこの一般社団法人でも会費への優遇税制が受けられる可能性があります。しかし、補助金や助成金、はたまた全ての利益への優遇税制の適用を考えているのであれば、さらにステップアップすることができます。これが公益社団法人と公益財団法人です。やり方としてはいきなり公益社団法人と公益財団法人が設立できるのではなく、一般社団法人と一般財団法人を設立しておいて、ある程度の活動実績をふまえてから公益の認定を受け、「一般」の頭を「公益」に書き換えるという方法となります。それではそもそも一般社団法人や一般財団法人とは一体なんなのであるのか考えて見ましょう。
一般社団法人とは
一般社団法人とは2人以上の人(社員)が集まって作る団体のことです。構成員は社員と呼ばれ、普通の人でも会社でも社員になることができます。団体の目的は何でも構いませんが、法人設立後の活動実績を積んでから公益社団法人を目指すのであれば公益目的とします。公益でないのであれば共益(団体の構成員のみに利益)か私益(特定の個人の利益)を目的とします。株式会社と異なり、団体の儲けを団体構成員で分配出来ませんので注意します。つまり配当は不可能ですが給与は可能です。共益とは例えばその団体の会員になった方々のみに何かのサービスを提供するといった形態で、私益とは心臓病を患う何々ちゃんを救う会のようなものです。
一般社団法人の最小単位は社員2人ですが、理事を1人以上を必要としますので最小単位は社員2人、理事1人となります。社員が増加しても理事1人で一向に構わないのですが、出来れば理事会を設置し、この場合は理事を3人以上とし、必ず監事を1人置きます。理事の任期は2年間で、監事は4年です。同じ人が再度行う場合でも法務局に重任の手続きは必要です。理事は普通の人が就任します。会社等の法人は理事になれません。
会社の資本金に該当する基金は不要です。
一般財団法人とは
一般財団法人とは、一定の額の財産の集まりに法人格を与えるもので、少しわかりにくい概念なので説明します。例えば大金持ちが土地等の資産を抱えたまま死ぬとします。この場合相続人に膨大な相続税がかかるので土地が切り売りされたりします。しかし、生前に財団法人を設立してここに全財産を寄附すれば資産は全て財団のものとなります。このようにすることでその土地を公園や緑地帯にして環境保全に役立てることができます。そのほかにも多くの方々が資金を出し合って財団を設立し、生活困窮者の子ども達のための教育基金を設立したり、NPOや福祉団体を支援する団体にも活用できます。従来ですと何億円もないと財団法人は設立出来ませんでしたが、平成20年からは300万円から設立できます。きっと多くの財団ができる事でしょう。
財団法人を設立するには設立者(1人で可)が財団の目的たる事業を決めます。これは公益でも共益でも構いませんが後での変更は不可能です。次に財産を管理する管理者である理事を決めます。理事は3人以上ですが、この理事を監視するお目付役として評議員を3人以上置きます。これ以外に監事も1人以上置きます。以上で財団法人の組織は完成です。
一般社団法人と一般財団法人の事業
法律では何でも出来るとなっていますが、基本的に商売として成り立ちませんと法人自体が破産します。そこで実例を少し挙げてみます。
同業者団体・・・同じ仕事を営む人々が結束して社団を設立し、同業者の社会的地位の向上や商売に役立つ情報の提供、資材の共同購入、資金援助など行います。
検定認定団体・・・何らかのサービスや商品が一定の水準に達しているか否かを第三者的立場で検定し、お墨付きを与える団体です。
技術系団体・・・新たに開発された技術や技能、サービスの普及を図る団体。
福祉系団体・・・高齢者に仕事を紹介したり身体障害者や知的障害者のための施設を運営したりします。
学術団体・・・いわゆる学会で、特定の分野の学術研究を深く推し進めるために組織されたもので大学教授が集まって組織するものがたくさんありますが、別に大学教授で無くても一般の人々がレアな分野の研究で結束しても良いと思います。例えば冬虫夏草やあめふらしの研究等でも楽しい学会が出来そうです。
スポーツ芸能団体・・・地域で絶滅仕掛かっている伝統芸能や新しい創作活動、特定のスポーツの保護と普及を図ります。
趣味団体・・・何らかの趣味に凝っている方々が集まって親睦や趣味の普及を図る団体です。
地域振興団体・・・地域の活性化を目的とする団体で、観光振興や商店街の活性化等があるでしょう。
公益法人認定とは
普通に社団法人や財団法人を設立するのは簡単です。しかし、そのままでは原則課税になります。寄付金も課税されてしまいます。そこで、公益法人認定法があります。これにより公益認定を取得すれば公益社団法人や公益財団法人に名称変更できます。変わるのは名称だけではありません。収入に対しては原則非課税となりますし、なにより寄付金優遇措置というNPOにすらない特典があります。この認定ですが政府が設置する公益認定委員会が適切に判断しますが、通常は書面審査です。それでは公益認定される活動を以下に列挙してみましょう。
一学術及び科学技術の振興を目的とする事業
二文化及び芸術の振興を目的とする事業
三障害者若しくは生活困窮者又は事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
四高齢者の福祉の増進を目的とする事業
五勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
六公衆衛生の向上を目的とする事業
七児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業
八勤労者の福祉の向上を目的とする事業
九教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵養することを目的とする事業
十犯罪の防止又は治安の維持を目的とする事業
十一事故又は災害の防止を目的とする事業
十二人種、性別その他の事由による不当な差別又は偏見の防止及び根絶を目的とする事業
十三思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護を目的とする事業
十四男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
十五国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
十六地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業
十七国土の利用、整備又は保全を目的とする事業
十八国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
十九地域社会の健全な発展を目的とする事業
二十公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
二十一国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
二十二一般消費者の利益の擁護又は増進を目的とする事業
二十三前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの。
中間法人はどうなるのか?
現在中間法人である団体は一体どうなるのか気になるところです。それでは有限責任中間法人と無限責任中間法人とに分けて説明しましょう。
★有限責任中間法人 いわゆる300万円以上の基金を保有する中間法人です。このタイプの法人はそのまま放置しておくと中間法人のまま存続します。名称は中間法人です。しかし、総会を開催して定款等を変更することで名称を一般社団法人へ変更することができます。
★無限責任中間法人 放置しておけば1年以内に消滅します。消滅を防ぐためには総会を開催して定款等を変更し、一般社団法人へ組織変更することです。無限責任中間法人にはこの道しか残されていません。つまり、選択の余地がないわけです。
どの公益法人が良いのか
以上のように平成20年から全部で5つの公益法人を設立することができます。一般社団法人、公益社団法人、一般財団法人、公益財団法人、特定非営利活動法人です。それぞれ一長一短があり、どれも決定版というものは存在しません。NPOが一番優遇されている感じもしますが、一般的にNPOは市民団体とか規模が小さい、儲け仕事は出来なくてボランティアという印象を持たれてしまいます。また条件が恐ろしいほど厳しい(全国26,000のNPOの中で認定を持つのは40〜50程度)認定NPOに成らないと寄付金優遇措置もありません。そのため、最初から認定NPOをあきらめて公益社団財団法人を目指すのも良いですし、現行NPOを解散して一般社団財団法人を設立して活動母体を変更することも良いと思います。
いずれにしろ社団法人や財団法人の設立が一般市民に開放されるのは良い傾向と思います。