投資組合とは?
そこで投資組合には民法、商法、資産流動化法、信託法、金融商品取引法等たくさんの法律が関係していて、投資家を保護しています。しかし、あまりに保護しすぎますと資金が国外に流失してしまい、結果的に国富の損失にもなりかねません。それはともかく組合という手法を用いた投資方法は登録又は届出が必要となります。さて、そもそも組合とは一体なんでしょうか。皆さんは子どもの頃、友達と野球クラブをやったことはありませんか。学校が終わると近所の空き地に集まり、野球をする仲間達。これはもう立派な組合です。同様に中学高校のクラブも全て組合ということができます。つまり2人以上の人々があつまり、何かやろうということになって一致団結をすればそれは全て組合と定義できます。遊びではなく仕事上の組合には登記するものとしないものがあり、しない物はただ仲間が契約書に記名押印するだけで組成できてしまいます。組成も解散も簡単な組合はスピード時代の現代社会にあっているのかもしれません。よって組合は仲良しクラブなんだと考えて気楽に以下の文章を読んでみてください。
1 投資事業組合への新しい法規制
最初に述べたように投資組合を規制する法律は日本には存在しませんでした。法律が無いのですから何をやっても許されるということでライブドアや村上ファンド、平成電電が暗躍しました。他にもワインファンドやラーメンファンド、アニメファンド等無数のファンドが存在し、いったいいくつ日本には投資組合が存在するのか、誰がどれだけ儲けているのかさっぱりわからないということで政府や金融庁は歯ぎしりして地団駄踏んでいたのですが、規制する法律そのものが無いのでなにも出来ないという無防備に苦しんでいました。そこで平成18年になり、金融商品取引法が成立しました。この法律が命じているところは投資に関する組合はほとんど金融庁に登録又は届出をしなさいという点です。
金融商品取引法では「集団投資スキーム」という用語が用いられており、これは「他者からお金を集め、何らかの事業又は投資を行い、その収益を出資者に分配する仕組み」と定義されています。何らかの事業なので例えば投資先が株式やFXはもちろん、アイドル、映画、絵画、ラーメン、棚田、リンゴ、海老等々この世に存在する全てのものが当てはまります。この法律により平成20年4月1日以降にこれに該当する業務を行う方々は登録又は届出が必要になってきます。登録又は届出が無い場合は業務が不可能となりますので注意が必要です。金融商品取引業についてさらに詳しくは金融商品取引法に関するページをご覧ください。
具体的には匿名組合、任意組合、投資事業有限責任組合を利用して出資を募集している方々は第2種金融商品取引業の登録が必要です。そして更に集めたお金を運用会社に委託せずに自ら証券投資等の運用を行う場合はは投資運用業の登録も必要となります。これらの登録を受けないで業務を行いますと罰則を受けますのでご注意下さい。但し、特例を受けてファンドを経営する方法もあります。この下の「6 適格機関投資家等特例業務」の項をご覧ください。
2 投資事業組合とは
投資組合又は投資事業組合とはいったい何なんだ、とおっしゃる方々も多いようです。組合の定義で行きますと2人以上の人が集まって互いに資金を出し合い、何かに投資して儲け、儲けを互いに分配するものが投資事業組合と単純に考えて頂ければわかりやすいでしょう。例えば友人3人で金を出し、代表で一人が商売をして、儲けを山分けするなどという物も立派な投資事業組合と言えます。通常投資組合と言えばお金を儲ける才能に恵まれた方に自分の資金を投資して高い利回りをみんなが期待するもので、利回りがとても重要になってきます。投資事業組合は略して投資組合とも呼ばれ、投資組合も投資事業組合も全く同じ物です。いわばお互いの約束事に基づいて儲けて利益は山分けしましょうという契約に基づく団体行動と言えます。投資組合は何に投資するかで組み合わせがたくさんあります。その組み合わせのいくつかを以下に示しますが、これだけではありませんのでご承知おきください。
3 投資事業組合の種類
単なる組合契約の締結の有効性という限られた分野ですが法律は4種類の組合形態を定めています。他にもたくさんありますがあまり一般の方々には関係ありませんので省略します。そして組合を始める場合はこの4種類から一番合ったものを選んで、その法律にあった組合契約書を作成し、組合員になる人たちが集まってこの組合契約書に同意してからハンコを押してそこでやっと組合が始まるようにしています。あくまで組合契約の締結手続き関してのみですので締結後は組合員同士で話しあい、自由に活動内容や儲けの配分を決める必要があります。特に活動内容が他の法律に触れる可能性がある場合はその分野の専門家に良く聞いてから事業を始めましょう。特に一つの組合の組合員が別の組合の組合員になるという親ファンド子ファンドの形(スキームと呼びます)をとるところもありますので形は様々です。分け前の配分や組合運営者の報酬等は額に法的な制限がありませんので、きっちり契約書に書いて、出資者の同意を得ましょう。あとあとトラブルの元になります。特に税務関係は税理士さんや地元の税務署に聞く事をお勧めします。
@任意組合
民法667条で規定されています。2人以上が必要で、全員が一致団結して事業を行い、儲けも損も全員で分け合うような組合です。全員でどんな事業をするのか、誰がどんな分担で仕事をするのか、儲けの分配はどう
するのかを話し合い、その内容を書いた組合契約書を作成します。よって組合契約書も一つの物を作成し、最後のページに全員が記名押印して完成させます。この契約書のコピーを各組合員は保管します。組合員はこの組合契約書の最後のページを見れば誰が参加しているのか、いくら出しているのかバレバレという欠点もあります。事業目的に制限は全くなく、何でもOKです。
この形態の組合で向いているものは、組合員数が2〜5人程度で、全員がいわば目的事業に関してのプロ集団である場合です。全員合意での組合ですので途中加入は厳しいと言えます。例えは悪いですが銀行強盗型組合といえます。
図のように組合員A,B、C、D、Eが集まって組合の内容を決定し、組合契約書に記名押印すれば組合は設立します。全員が無限責任のプロ集団組合とも言えます。最も実務的には組合員の一人を業務執行組合員にして他の組合員の出資金を預かり運用を責任をもって行うことになります。損をした場合は全員が責任を取ることになります。また、金融商品取引法で運営者は登録が必要になるために現時点であまり良い方法では無いともいえます。しかし組合員全員が事業に参加する共同事業の場合は金融商品取引業の登録を免除される場合もあります。
A匿名組合
商法第535条に規定され、目的が商売にのみ限定されています。この組合のおもしろい所は営業員と出資者という2者しか存在しないことです。営業者とは組合を運営して集めたお金を運用するプロで、出資者はお金
は出すけどクチは出さない人で匿名組合員とも呼ばれます。図に示すように全員が同じ組合に属しているのに営業者と匿名組合員が個別に契約書を交わして成立する組合です。なぜこんな面倒な事をするかと言えば、任意組合ですと1本の契約書の最後のページに組合員全員の名前と出資額を記載します。しかし、これではプライバシーもあったもんではありません。そこで1つの組合なのですが、組合運営者(営業員)と各組合員(出資者)が個別に契約書を交わして組合を成立させるのです。この方法であれば営業者は誰が組合に参加しているか全て把握できますが、各組合員は誰が参加しているのか、誰がいくら出しているのかはわからないのでプライバシーが保護されます。匿名組合では営業者は無限責任、組合員は有限責任です。よって任意組合より相当進化しています。匿名組合で有名なものとしては日銀総裁も参加していた村上ファンド、三菱商事が運営するプラチナファンド、破綻しましたけれど平成電電など膨大な数があります。
この組合も金融商品取引法で運営者は登録が必要となります。
B投資事業有限責任組合
特別法で規定された株式投資に限定された投資事業組合です。詳細は投資事業有限責任組合のページでご覧ください。この組合は組合運営者(無限責任組合員)を登記する点がミソで、誰でも謄本を取れば誰が運営しているのかわかる点です。但し、出資者(有限責任組合員)は登記しないので匿名性が守られます。

C有限責任事業組合
有限責任事業組合のページをご覧ください。この組合はどちらかというと投資というより共同事業に近い形に最適です。
D有限責任事業組合と匿名組合の合成型
有限責任事業組合(LLP)を登記した後、組合員が出資者と匿名組合契約を締結する形です。数社が共同でファンドを運営する場合に用いられます。この場合、LLPの保有資産が10億円以上ある場合は適格機関投資家とみなされて、出資者が49人以下の場合は第2種金融商品取引業の登録が不要となり、届出だけですみます。これに該当しない場合は第2種金融商品取引業の登録をします。さらに集めた資産を運用会社に委託しないで何かに投資して運用する場合は投資運用業の登録も必要です。
4 投資事業組合の契約のポイント
@利益配分
投資家がいくらもらって、運用業者がいくらもらうかという一番もめる点といえます。投資家が9割で運用業者が1割なら投資家が喜びますが、8:2だと微妙となります。このあたりは話し合いでしょう。
A満期
投資事業組合は開始日と終了日が必ず存在します。毎年(又は毎月)配当して終了日で出資金を全額払い戻し、組合は終了となります。場合により延長もありますのでこの延長項目も入れると良いでしょう。せっかく儲かっているのにやめるのはもったいないと出資者のほとんどが同意すれば延長できます。
B借金
投資事業組合は保有している運用金を担保にお金を借りることができます。この方法で運用金をでかくして利益を稼ぐ方法もしばしばとられています。しかし、失敗したら大変なことになりますのでこのあたりも契約書に記載しておくべきでしょう。
C運営者の給料
ファンドは運営者が居ますのでこの方に運営に伴う給料を支払う必要があります。管理報酬とも言います。通常ファンドの保有資産の何%を年間で支払うという約束を契約書に記載しますが、毎年管理報酬を払っていると運用者も儲けさせるためにファンドを作ったようになりますので、開始日から一定年月経ちますと毎年下げていくのが通常です。
Dキャピタルコール
追加出資のことです。運用金を投資していって全て尽きると運用者は投資家に「そろそろ運用金が無くなるので追加の出資をお願いします」と呼びかける(コール)するためこう呼ばれています。
5 適格機関投資家等特例業務
さて、第二種、投資運用業の登録には膨大な労力と経費が必要です。そこで金融商品取引法は小規模ファンド(49人以下)については登録しなくても届出だけで投資組合を作れるように特例を設けています。これが金融商品取引法第63条(PDF)の適格機関投資家等特例業務です。法律の条文の定義によりますとこの適格機関投資家等とは49人以下の一般投資家及び適格機関投資家の総称です。適格機関投資家は保険会社、銀行、証券会社、投資事業有限責任組合などで金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令(PDF)(平成五年三月三日号外大蔵省令第十四号)に列挙されています。この63条ですが、良く読みますと民法組合などで投資事業組合を組成した場合は、その出資者に1人以上の適格機関投資家がいれば、他は49人以下の一般投資家だけであっても特例を認めて出資者の募集や集めたお金の運用を特例で認めると書いてあります。よって自分の組成した投資組合に銀行や証券会社が出資してくれれば話は一番簡単なのですが、あまりそのような事例はありません。そこで公認会計士の報告書の作成が義務化されていますが、専門家に依頼すれば比較的簡単に組成できる投資事業有限責任組合(LPS)を登記し、このLPSが民法組合などにに出資するようにすればこの特例が認められることになります。
これが金融商品取引法63条のハに規定されていて、この部分の定義が金融商品取引業等に関する内閣府令(平成十九年八月六日内閣府令第五十二号)の第235条(PDF)に記載されています。結局63条の特例の適用には適格機関投資家等(49人以下の一般投資家)が民法組合等で投資組合を組成する場合は、その相手方つまり出資させる組合員であるその者が内閣府令235条2項イ、ロの両方に該当すれば良いわけです。特にこの条文は上記したLPSを出資者として受け入れる民法組合のようにファンドがファンドに出資するファンドオブファンズ(入れ子型)について規定しています。ファンドオブファンズは親ファンド子ファンドとも言われ、お金を集める方を親ファンド、お金を受け入れる方を子ファンドとよびます。今の事例の場合はLPSが親で民法が子になります。第235条は親がLPSで子が民法、匿名、LLP等の場合は親の無限責任組合員と子の無限責任組合員が同じ(同じ人又は同じ会社)なら、親と子の一般投資家の数が49人以下なら特例を認めるとう意味です。

以上から特例で投資組合を組成するためには上記の条文を全て考慮にいれた内容のLPS契約書、民法組合契約書を作成し、法務局に登記及び財務省への届出を行うことで49人以下の小規模ファンドの組成を行う事ができます。
なぜこんな内閣府令235条が有るのかと考えますと、投資事業有限責任組合は内閣府令で適格機関投資家と定義されています。それならと投資事業有限責任組合に投資家を何千人も集めてそれを民法組合に組み込んでしまえばいくらでも投資家を集めることが可能となり、金融商品取引法第63条が全くのザル法になってしまいます。それを防ぐためと思われます。それでは適格機関投資家等特例業務を行うためのファンドの構成例を以下に少し示します。
小規模ファンドの3態
入れ子のファンドで特例に当てはめて投資組合を組成するには金融商品取引法第63条と内閣府令52号の第235条の両方に則ったスキームにする必要があります。以下に代表的な特例ファンドの三種類を挙げてみますが、皆さんも条文を読みながら他にもないか考えてみてください。
1 LPSと民法
LPSを親ファンドとし、これを民法組合に入れ子にするものです。民法組合は子ファンドとなります。一番経費がかかりません。
2 LPSと匿名
LPSを親ファンドとし、子を匿名組合にするものです。2と似たようなものです。
3 LPSとLPS
LPSを親ファンドとし、さらに後一つLPSを組成して先のLPSに入れ子にするというものです。LPSが二つになるので公認会計士の監査代金が2倍となり、かなり不経済ですね。
他にもLLP(有限責任事業組合)を利用する手もあると思います。
6 投資事業組合のビジネスへの応用
ファンドの法整備が進むことでビジネスへの応用もこれから拡大していくものと思います。例えば会社が新規事業を行う際に、その資金集めの手段として銀行借り入れではなくファンドを利用するとか、会社の余裕資金の運用の一環としてファンドへ出資するなどの方法があります。また、会社の事業そのものがファンドの運営という会社も増えていくことでしょう。日本は欧米に比べてまだまだファンドの数も種類も金額も能力のある運営者も少ないようです。発展途上の債権国である日本はただ闇雲に働いて稼ぐ時代から投資して稼ぐ時代に入りつつあります。ファンドの運営のスキルを身につけて新しいビジネスマンとして活躍するのも良いかもしれません。