有限会社の行方

一人社長でも設立でき、しかも資本金が300万円ですむ。おまけに役員の任期は一生というとても便利な会社組織である有限会社は昭和13年から始まってずいぶん長い間日本の経済を支えてきました。しかし、平成18年惜しまれつつ有限会社法は廃止となりました。いわばハシゴを外された形となった有限会社達は一部は株式会社化し、一部は特例有限会社としてしぶとく生き残っています。これからどうするのか有限会社の社長さん達は決定をすべき時となっています。

有限会社の株式会社化は簡単です

今まで、株式会社は資本金1000万円以上、取締役が3人以上、監査役も1人以上必要でした。また役員の任期も2年と短く、2年ごとに重任登記をしなければならないという面倒なものでした。
しかし、新会社法になりますと株式会社は資本金は1円以上ならいくらでも良く、取締役は1人のみ(社長兼任)でも大丈夫です。取締役の任期も手続きにより10年と長くなるため、重任手続きが10年に1回で済みます。取締役会も不用になり、取締役会が存在しなければ監査役も不用です。つまり社長一人の株式会社が可能になるのです。これだけ敷居が低くなった株式会社ですからこれからドンドン株式会社が設立されていくのに従来の有限会社は「みなし特例有限会社」などと法律上表現されて冷遇されています。もうこうなったら思い切って有限会社を株式会社化するもの良いのではないでしょうか。

有限会社を株式会社にして会社法の利点を最大限に活用しましょう

会社法には有限会社を株式会社に簡単に変える移行規定が含まれており、この規定で株式化すれば簡単です。しかも会社法の優遇措置が受けられるために以下の利点もあります。
@似た名前の会社名もOK
今まで自分が気に入っていた会社名なのに同じ市内に似た名前の会社があるために登記をあきらめていました。でも今度は大丈夫です。株式会社にするときに好きな会社名に変えることができます。同じ会社名で同一業種でも本社の住所が1番地でも異なれば登記可能です。
A資本金1円でもOK
今までは株式会社は資本金1000万円(資本金特例会社を除く)が必要でした。でもこれからは資本金は1円以上ならいくらでも大丈夫です。よって既存の有限会社も資本金300万円のまま株式会社化できます。
B増資が簡単
今まで増資するには銀行に増資分の現金を預けておいて証明書を発行してもらうという敷居の高いものでした。しかし、これからは会社の通帳のコピーだけでOKです。資本金が多い信用力のある会社にしましょう。
C社長1人でOK
株式会社は従来最低でも4人の役員が必要でした。でもこれからは取締役1人(兼社長)でも大丈夫です。既存の会社も名前だけの役員がいましたら首にして身軽な会社でフットワーク軽く経営して行きましょう。よって一人有限会社もそのまま株式会社になれます。
D株主総会は温泉で
従来、株主総会は会社の本社かその近辺でしか開催できませんでした。でもこれからはどこでも大丈夫です。どうせなら草津あたりで開催するのもオツかもしれません。
E役員任期は10年
従来、株式会社の役員は任期が2年で、重任登記を2年ごとに行う必要がありました。でもこれからは定款を変更することで取締役任期を10年にできます。これで面倒な重任手続きが10年に1回で済みます。
F破産者でも役員OK
従来破産者は株式会社の役員になることはできませんでした。でも。これからは破産していても就任できます。

今までの1円会社はどうなるのか?

株式1000万円、有限300万円の最低資本金規制の特例に基づく確認会社、いわゆる1円会社はどうなるのか気になるところです。会社法では最低資本金に関する規定が廃止されましたので、会社は全て1円以上の資本金があれば設立できることになります。つまり1円会社は特例でも何でもなく普通の会社ということになります。これに伴い、特例も廃止となります。
ところが1円会社を設立するときに「設立から5年以内に通常の会社に組織変更しないときは解散します」という規定を定款に入れ、登記簿謄本にもそのように記載されています。そのため会社法が施行されてもこの規定は自動的には消えません。そのまま放置しておくと会社は自動的に解散になってしまいます。よって確認会社を会社法本来の株式会社に戻す必要が出てくるのです。これが「解散事由を廃止するための定款変更手続き」です。
方法としては取締役の過半数の決議でこの「規定」の削除を決め、変更登記を法務局に行う必要があります。1円株式会社であれば解散の規定を削除するだけで手続きが終わりですが、面倒なのが1円有限会社でして、この場合は解散規定を削除して残った会社がさらに特例のみなし会社ということになります。よって係る費用もほとんど同じですので、1円有限会社は一気に普通の株式会社にしてしまうのが得策です。

株式会社になるとこんなメリットが

@株式の公募や社債の発行ができる
自分の会社の株を発行し、それを不特定多数の方々に購入してもらう方法で銀行なしで資金を集めることが可能になります。従来公募は結構面倒でしたが会社法が始まることで簡単になりました。
社債発行は節税対策として盛んに行われています。少人数私募債と呼ばれ、役員が会社に金を貸し付ける形をとってその利息を会社が役員に払い、会社側は利息を経費として全額落とし、役員は受け取った利息の20%の源泉税を払うだけでOKという節税法です。
A会社が株主
会社の株は普通、会社の役員さんやその家族が保有しています。でも自己株保有といって会社自身が会社の株を購入することができます。
B会社の売却や合併が簡単
会社の経営はまあまあ良いのに後継者がいなくてやむなく廃業する方も多いとおもいます。しかし、大丈夫。会社を現金でそのまま他人様へ売却する「キャッシュアウトマージャー」という方法があります。
その他にも株式交換とか三角合併等の会社の合併がより簡単に柔軟になりましたので、知人の会社と自分の会社を合併させたり、子会社にするなのど方法で会社経営を続けて行くことができます。
「しかし、私の会社は債務超過なので合併できないのでは」と心配なさる社長さん。大丈夫です。会社法施行で債務超過でも会社の合併等は可能になりました。
他にも会社が不動産を保有しているなら、不動産を売却するのではなく、会社の株式を100%売却することで不動産の所有権を他人に移すことができます。普通不動産を売却したことによる売却益は半分が税金で持って行かれますが、株式売却益は20%の課税ですので究極の節税法と言えます。額が多いほど節税額は大きくなります。
Cかっこ良い
何となくくだらないのですが、「有限会社渡辺塗装店」よりも「株式会社渡辺塗装」のほうがかっこ良く見えます。結構このあたりの精神的影響は社長以下社員のやる気に影響があります。
D増資が簡単
今までは、増資するにはいちいち銀行に高い手数料を払ってお金を保管してもらい、保管金証明書を発行してもらって増資していました。しかも増資登記が完了するまでこのお金は手が付けられません。
でもこれからは増資は残高証明書だけでOKです。
こんなにたくさんメリットがあるのにただ指をくわえて利用しない手はありません。以下に有限会社から株式会社へ変更するための手順をご紹介いたします。

有限会社を株式会社に変えると同時に出来る事

有限会社を株式会社に変えるのですから当然の事ながら会社名は自由に変えることができます。また同時に会社印も変えることができます。この他に以下の事が同時に可能です。
@事業目的の追加と削除。株式会社化する時に心機一転して新しい事業にチャレンジし、従来の事業は削除するのも良いかもしれません。この辺は自由にできます。
A役員の変更。有限会社時代の役員をそのままにしておいても良いのですが、新しく就任したり辞任させたりもできます。従来の役員を全員辞任させて完全に新しい役員で置き換えることも可能です。取締役会を設置したり監査役を新たに置くことも可能です。
B事業年度の変更。今まで4月1日から翌年3月31日だったものを別に変えることもできます。
C役員の任期の変更。従来の有限会社に無かった概念です。10年以下なら何年でもOKです。
D発行可能株式総数の変更。発行できる株式総数の最大値の事で、普通にやりますとこれだけで印紙代が3万円かかります。
以上のように単独で手続きすれば相当の印紙代がかかる多くの手続きが有限会社を株式会社に変えると同時に行えば、無料でできることになります。

有限会社を株式会社に変える手順

@定款変更
A商号変更による株式会社への移行による株式会社設立登記申請
B商号変更による株式会社への移行による有限会社解散登記申請 
以上で法務局関係は終了です。新しい株式会社の謄本には元の有限会社から移行した旨の記載がされますので、会社自体は単なる組織変更となります。許認可等はそのまま会社名変更届で済みます。他には税務署への変更届、名刺や看板、ゴム印やハンコ等の変更もあります。